以前の出版時に宝島社にカットされた部分などを加えて加筆修正して復刻した本は、アマゾンKindle unlimitedに入っているので、月額料金を払っている人は無料で読めます。入っていない人でも、30日間お試しをすれば無料で読めます。どちらもできない人でも、サンプルで一部読めるのですが、パソコンやスマホにソフトやアプリを入れたくない人・面倒くさい人もいると思うのでブログで一部紹介します
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はじめに

私は某大手生命保険会社の元社医である。会社名はまあ、仮に丸の内生命保険とでもしておこう。
ところで、生命保険の社医と聞いて、一瞬、社員の健康管理やケガの手当をする会社の医務室を思い浮かべた人も多いだろう。しかし、社医は社員の診察などしない。社医の仕事は、保険加入を希望する人の健康診断(診査)を行い、異常を発見すること。ひと言でいうと、「保険加入にNOを出す」ことだ。
保険加入にNOを出す?そんなバカな。生命保険なんて、無理やり加入させられることはあっても、断られることなどないのではないか---。そう思う人も多いだろう。
ところが現実には、健康診断で加入お断りの「謝絶体」(もしくは延期体)」や、割増保険料を取られる「条件体(標準下体)」となる確率は、軽く一割を超える。さらに、保険の種類や金額を制限される「今回限り普通決定」となるケースや、入院制限をつけられるケースを含めると、実に四分の一が診査で引っかかることになる。
このような条件がつくことを、保険外務員などは「事故がつく」と呼ぶ。つまり、社医は、「事故を起こす悪い奴」というわけだ。
生命保険の社医は、みんなに嫌われる。無理もない。やっと契約にこぎつけよういう外務員にとっては、「人の苦労を水の泡にする奴」だし、無理矢理加入を承諾させられた客にとっては、「人の時間を無駄にしたあげく健康にケチをつける嫌な奴」なのだ。
病気を隠して保険加入を目論む人にとっては、眼前の敵であることは、言うまでもない。さらに万一異常を見落とした日には、「会社に損害を与えた無能な医者」との責任まで押し付けせられる。どっちを向いても、およそ感謝されるということのない職業なのである。
ところで、生命保険の契約は保険会社の契約部が行う「査定」によって決まる。社医の診断をもとにしているはずのこの査定というやつが、実は曲者なのだ。
まず、お客さんの地位や肩書によって査定が変わり、加入の可否や条件が変わることがある。また、成績が優秀で発言力の強い外務員が、一度ついた査定をひっくり返すこともある。丸の内生命のお偉いさんは、全国社医会議の会場で、「契約査定は、健康診断の結果だけで決まるわけではない」との暴言を吐いた。こんなことでいいのだろうか。
今まで、保険会社について書かれた本はたくさん出ているが、営業サイドの保険を取る立場(管理する立場を含む)から書かれたものか、もしくは外部の者が取材によって書いたもののどちらかだろう。私が読んだ本の中には、損害保険で営業の立場ではない、調査員が書いた本はあった。しかし、著者は損害保険の社員ではなかったし、しかもすぐにその仕事をやめているので会社の内部事情については触れられてはいない。
 だいたい、営業サイドから書かれた本の場合は、「外務員残酷物語」といったものだろう。確かに、成績の悪い外務員は会社からボロ雑巾のように扱われるが、成績優秀な外務員にとっては生命保険会社とは、実に都合のいいところでもある。
 成績優秀であれば、部長や常務から晩餐会に招かれて接待されもするし、たいていのわがままは通ってでかい顔をすることもできる。もちろん、成績優秀な外務員のご機嫌を取るために会社が社医のクビを飛ばすなど、朝飯前だろう。会社にとっては、優秀な外務員の代えはないのだが医者の代えはいくらでもあるということだ。
保険会社の社医は自分の仕事が世間様のお役に立つとは思っていないし、(私を含めて)さして会社に対して忠誠心を持ってはいない。ただ、生活の糧と割り切って仕方なく会社に残っている人が多い。会社に対して恨みを持っている人もいるくらいだ。一方、長く勤めている外務員には、妙に会社に対する屈折した忠誠心を持つ人もしばしば見受けられる。
 私は会社のあまりのでたらめさに堪忍袋の緒が切れたので、社医独自の視点から見た会社について、これから書いていこうと思う。読者の皆さん、生命保険会社にだまされてはいけません。保険を取る立場と180度異なった視点から会社を見ると、同じ会社でもこんなに違って見えるということが分かっていただけることでしょう。
 この本は、これから生命保険会社に入社しようとする人や、生命保険に加入しようと思っている人にも大いに参考になるだろうし、生命保険の営業の現場で働いている人にとってもきっと役立つことだろう。また、家庭の主婦や都会のビジネスマンにも、是非読んでいただきたいと思っている。