生命保険社医は知っている(今井夏三)

丸の内生命(仮)の元社医が書いた、大手生命保険会社の実態です。グループ会社をモデルにして、タイヤが空を飛んだWOWOWドラマも作られました。2018年夏には映画も公開されています

2018年09月

生命保険にはいろいろな商品があるが、すべての商品は死亡保険と生存保険に分けられる。
死亡保険は死亡時に下りるものであり、ある一定期間の死亡のみに保障を行うので定期保険ともいい、すべて掛け捨てである。
生存保険とは、契約者が満期日まで生きていた場合のみ保険金を支払うものである。
ほとんどの保険は、死亡保険と生存保険の組み合わせからなっている。
保険の本には、「死亡保険には定期保険と終身保険があり、終身保険は掛け捨てではない」とも書かれている。
しかし、終身保険も、結局は生存保険と死亡保険が組み合わされたものである。
第四章の初めの方は、保険の仕組みとか保険料の計算など面倒くさいことが書かれているので、サンプルなどで初めの方だけ読んだ人はつまらないと思ってやめてしまうかもだが、そこは飛ばして読んでもいいと思う。
その先の、特別保険料領収法の保険料割り増し率や保険金削減法による保険金支払いの割合、血圧評点表の例などは保険の外務員にとって非常に役立つかもしれないし、保険加入を考えている血圧が高い人などにも参考になるだろう。

死亡保険 若いうちに加入したほうがいいのトリック  
死亡保険の保険料の計算をして、歳をとってから加入したほうが総額で安く上がるという解説。独身の若者が死亡保障をつけるのは、金をドブに捨てるようなものである。

生存保険の掛け金
生存保険の掛け金の計算をする。生存保険の割合の高いものが養老保険であり、死亡時20倍保障とか25倍保障とか倍率が上がっていくと、死亡保険の割合が上がっていく。

保険料割増率の決め方
保険会社は死差益で儲けている。死差益を出すには、無健康状態のいいものだけを加入させればいいのだが、そうもいかないので特別条件で調整する。
特別保険料領収法では、保険料を30%増から5倍の10段階くらいの区分けにしている。保険金削減法では、加入後の年数によって保険金支払い割合を1.5割から8割くらいに削減する。

血圧と割増率の関係
社医の診査でひっかかる人は多く、だいたい四分の一の人に何らかの条件がついている。一番異常が発見されやすい血圧を例にとり、評点表の例をもとに説明する。なお、特別条件がついた場合でも、告知内容によるものと血圧測定の結果からによるものではその後の結果が異なる。

社医以外で加入希望者の健康診断をする医者が嘱託医である。
嘱託医が診査で異常を見落として契約が成立した場合、結局は会社の責任として保険金は支払われる。
嘱託医のミスで会社が保険金支払いの損害を被ったとして、会社が損害賠償請求の訴訟を起こして勝訴した事例もあったのでびっくりである。

嘱託医は儲かるか?
基本的にすべて他薦で自薦はダメ。社医が説明と面接に行って嘱託医をお願いするのだが、面倒な割には診査料は高くない。ある営業所長はずいぶん高く説明していたらしく、私が診査料を説明すると安いので話と違うと少々ご立腹。委嘱は流れたが、営業所長は社医が怒らせたため流れと本社に文句を言って私を悪者に仕立て上げていたのにはびっくり。
繁盛している医院は嘱託医を辞退するクリニックもあるが、繁盛していないところは保険診査ばかりになるところも。

甘い先生を嗅ぎつける、外務員の「野生の勘」
嘱託医の中には、ろくに尿検査をしなかったり血圧を測らなかったりする手抜き(外務員にとってはとても都合がいい)をする先生もいることがある。測っても、かなり低めに書く先生もいる。
嘘を書く代わりに、中身の悪い報状を出さないでおいてくれる先生もいる。
外務員は甘いという評判の先生の所へ群がる。
会社では、先生ごとに異常を書いた割合が何パーセントとか、特別条件がついた割合などもすべてチェックしている。
かなり甘い先生は要注意嘱託医としてマークされているが、なぜ甘くなるのか?それには理由がある

嘱託医訪問はお土産配達
丸の内生命では、社医に楽をさせないようにするため嘱託医訪問に対してノルマができた。保険診査は何社もやっている医師が多いので、自社では嘱託医訪問を基本的にしない会社もあるのに、「保険診査の重要性などを説いてこい」と本社は言う。
しかし、釈迦に説法のような失礼なことを言って怒らせたらバカを見るのは社医自身なので、結局はお土産渡しておしまいと帰ってくるだけとなったりする。
経費節減で、数百円のお土産はケチくさい。少しは予算つけてほしい。

嘱託医からの苦情
営業職員が診査の日付を前の日に変えてくれと言ってきたり、自分で報状を本社に持っていくと言って中身を見て捨ててしまう者がいたり、診査結果によっては文句を付ける人が来て困ったりするという。

嘱託医のランク
嘱託医にもランクがあり、ランクが高くなると社医がするような高額契約の診査とか健康状態の怪しい人の診査もできるようになる。
診査料は少し上がるのだが、面倒くさくて割の合わない受診者が増えるので辞退する先生もいる。

第二章の紹介

「診査」って何
生命保険に加入するには、例外も多いが医師による健康診断が必要である。これを診査というが、診査に関しては病気をごまかして保険に加入しようとする人もいるし、「健康診断ではなく、話を聞くだけだなどとうそを言っている外務員もいたりする。いろいろなせめぎ合いの攻防がありトラブルが多い

正直ではない告知
診査はまず告知を取ることから始まるが、嘘をつく人が非常に多い。会社が知っていること(入院給付金をもらったことなど)に対して嘘をつくと不利になることがあるが、会社が知らないことを正直に告知すると不利になったりもする。
個人的な意見としては、どんな思い病気でもある三条件を満たすと、告知しなくとも死亡保険金は下りるだろう。

診査の実際
シンプルなものだが、ひっかかる受診者は多い。しかし、シンプルゆえすり抜けることもできる

血圧検査は甘いが、保険料割り増しもあり

異常を発見される率がもっとも高いのは血圧検査で、十人に一人はひっかかる。ただ、数値の基準はそんな厳しいものではなく、普通の感覚でいうと高血圧でも、正常決定したりする。
しかし、会社の健康診断と違って血圧の高い人の割合が非常に高く、血圧200以上の人もよく見かける。また、血圧の高い人ほど夜遅くに往診してほしがったりする。血圧が高くて割り増し保険料になると、トラブルの原因になりやすいが、お客さんから苦情の来る社医は冷や飯を食わされたりする

尿検査で糖尿病ごまかしも
一般的な会社の健診では、糖が出る人よりも蛋白が出る人の方がずっと多いが、保険の加入診査では逆となる。要するに、糖尿病の人は生命保険に入りたがる。
なんとかごまかして検査結果を正常にしようと、インチキをする人もいるが、正攻法で突破しようという人もおり、有効な方法もある。

形式程度の腹部触診
形式程度といっても、社医が腹部の腫瘤を見逃すと大変

心電図は高額契約・高血圧・不整脈などで必要
健康状態が悪くて心電図の指示が出た場合、ものによって心電図を提出しさえすれば正常決定で通るものもあるが、心電図検査をしても割り増し保険料は覆らないものがある。どんなものがそうなのか?

血液検査で主に糖尿病チェック
糖尿病は、血液検査をされたらごまかせない。
血液検査は一発で決めないとトラブルになるが、社医はセルフサービスでしなければならない。
実際に訴訟になったケースも

視診で手術痕や入れ墨・指の欠損を発見
医者が手術痕を見逃していたら、もうその病気では告知義務違反で契約を解除できなくなる。
保険加入希望者には、(タトゥーではない)入れ墨が多い。入れ墨があると、入院特約はまず付けられないが、つけられないと契約はだいたい流れる。それでは、どうしたら入れ墨を見逃してもらえるか?
他にも、ある種の傷のある人は生命保険加入は難しい>


社会的に地位があると自分で言う人
入れ墨のある人は、医者に対しては一応の礼儀を持っているが、自分が社会的に地位があると勘違いしている人はやっかい。「社会的に地位があるんだから、診察なんてしなくていいでしょう」と言い出したりする。尿検査もしようとしないで「侮辱された、訴えてやる」とクレームを言ってきたりする
そういう場合、結局社医が悪者にされてしまう

「保険に入りたくない」と泣きつく客
外務員に無理やり勧誘させられようとしている場合、社医に「本当は入りたくない」と泣きつく人もいる。そんな人は、診査で異常が発見されるととても喜ぶ。

社医以外による診査
告知書扱、面接扱、嘱託医扱、健康証明書扱、人間ドック扱がある。方法によって、有利なものもあればえらく損なものもあるのでご用心。

診査の既成事実を作ってしまえ?
年齢や保険金額によって面接扱、嘱託医扱、社医扱などの扱える金額が決まっている。規定外のものを認めてもらうためには事前に本社に了承を取っておかなければならないが、承認をもらわずに診査を先にして事後承認をしてもらおうとする者もいる。当然、契約の通りそうな甘いところで診査を受けるわけである。



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