生命保険社医は知っている(今井夏三)

丸の内生命(仮)の元社医が書いた、大手生命保険会社の実態です。グループ会社をモデルにして、タイヤが空を飛んだWOWOWドラマも作られました。2018年夏には映画も公開されています

人はなぜ生命保険という商品を買うのか?
他のものと違って、生命保険はおよそ「買いたい」という気持ちをそそらない商品であるため、保険のセールスは難しい。
もしかして、価値のない商品を、お客さんに無理にお願いして引き取ってもらっているということなのかもしれない。

一億円の保険で収入百万円
高額の歩合を受け取るために、外務員は必死になる。最近では、各社の保険を比較して申し込める代理店がやたらと増えたし、カード会社からはよく保険勧誘の電話がかかってくることから考えても、いかに保険勧誘の旨味が大きいかがわかる。
一億円の保険を取るためには、時間と経費がずいぶんかかっていたりもするだろうが、社医の診査で健康状態が悪いとされると保険料が割増となって契約が流れることが多い。
社医が正常と書かなかったため、百万円の手当てがなくなってしまうと社医は恨まれて敵をつくることになる。

診査でのトラブル
外務員が健康診断のことをきちんと説明していなかったため、お客さんが怒り出すということもしばしばある。
そうした場合、自分が説明していなかったことを棚に上げ、社医を悪者に仕立てて本社に文句を言ってくる者もいる。

こんな時は「同席禁止」を厳守すべし
診査に当たっては、取り扱いの外務員は同席してはいけないという決まりがある。建前ではお客さんのプライバシーの問題だが、本音では不健康だった場合外務員が口を出したり困るからである。外務員の車でお客さんの家へ行った駅から遠い場所では、診査の中身を聞かれて外務員と険悪になって山奥に置いて行かれても、なんとか自力で帰る覚悟が必要となる。

報状を捨ててほしい   
営業所の所長でも、診査の内容に聞き耳を立てており、結果の悪かった報状を捨ててほしいと翌日医務センターに電話をかけてきた者もいた。もちろん、他の方法で健康状態をごまかして正常決定で契約を通すつもりなのである。
締め切り日にお客さんがつかまらず、外務員に頼まれて仕方なく無面接報状を出してしまった面接士でクビになった人がいた。医務部が出している機関誌でも大きく紹介されたが、社医の間では頼まれる弱い立場の人間だけ処分するなんてひどいと会社に対する不信感を持たせることになった。

締め切り狂想曲
外務員はあの手この手を使い、何とか締め切りに間に合わせて翌月ではなく当月分の成績に計上しようとする。保険の成立には、申込書・初回保険料・報状の3つが必要である。締め切り前・特に重要月の締め切り前は社医は高額契約でなければなかなか往診に来ないので、一千万円の保険を一億円だと言って社医の往診を依頼してくる者もいる。ただの年金なのに二億円の保険と偽られて遠方の診査をした結果、私が契約部に怒られたこともあった。
これほどひどくなくとも、地方の支社では高額契約の診査依頼で社医のスケジュールを確保しておき、実際には保険金額の小さいお客さんのところへ行く場合が多い。

締め切り間際の自爆契約
締め切り間際には、保険が取れずに困って自分や家族に保険をかける外務員がけっこういる。追い詰められてそうした自爆契約をしなければならないのは気の毒なのだが、計算高い人もいる。外務員の収入には、資格やランクに応じて決まる手当もあるので、あと一件取ればアップするような場合自爆も有効である。

日付変更合戦に表締め切りと裏締め切り
会社によって、締め切り日に報状が必着のところもあれば報状の日付が締め切りに間に合っていればいいところがある。丸の内生命では、診査日が締め切り日に間に合っていればよかったので、日付変更(実際よりも前に変える)が横行した。実際の診査日より数日前の日付を嘱託医に書いてもらい、裏締め切り前に本社に持ち込むわけだ。
しかし、診査日には保険金を支払う上で重要な問題があるのでどうなるのか?

「第二裏締め切り 」まで出現   
裏締め切りが公然となると会社中が混乱をきたし、成績が悪かった月に「今月限りの特別措置」として締め切り日の延長が行われた 。要するに、来月分の成績を今月に計上して今月の成績を繕うわけだ。一種の粉飾結算と言ってもいいだろう。なしくずしに翌月も締め切り延長が行われ、支社長の許可もいらなくなった。
外務員にとっても、締め切りが突然延びてもっと頑張って保険を取ってこいと言われるので大迷惑である。
重要月にはさらに締め切りの延長が行われ、会社中に大混乱をきたしたのだが、医務部では
「救済措置によって、外部の人に嘘をつかせてまでやらなくて済むようになった」
と自画自賛していた。

不健康な人は「重要月」を狙え
保険会社には重要月があり、年3回ほどノルマが跳ね上がる。11月は生命保険の月として、各社共通である。
普通、営業キャンペーンでは特別割引価格になったりお客さんが何かトクをする。しかし、保険会社では保険料が割引になったりしない。
しかし、重要月には外務員がお礼の品をいつもより奮発する場合もあるが、契約部の査定はいつもより甘くなるようである。普通の月なら割増保険料が取られるような健康状態の人でも、重要月では正常決定で通る場合が多々あるので不健康な人にとっては重要月は狙い目である。

診査経費の無駄遣いで丸く収まる? 
重要月の締め切り間際では、業績のよくない支社では低額契約の不健康な人ばかりになる場合もある。どうみても保険に入れそうもない人でも、申込書を書いてもらい経費をかけて診査をすると、保険に入れなくとも一応、外務員も営業所長も支社長も顔が立つつらしい。

職員加入促進キャンペーン
重要月には、本社から保険加入の圧力がかかってくる。各支社や医務センターに、職員数に対する未加入者の人数や名簿が送られてくる。「過剰な勧奨はしないよう」にと」はあるが人事面の報復が怖いのでたいていは無理やり加入させられる。 社医は突っ張る人が多いが・・・

検証ハガキの本当の目的
保険会社の懸賞は個人情報を集めるのが目的なので、子どもが懸賞に応募するとさっそくそれをもとに勧誘にやってくるのでご用心。

募集経費は個人持ち
保険会社の外務員が持ってくる販促品は、すべて外務員の個人持ちであり、会社が外務員に売りつけているのである。会社が、どうみてもぼったくり価格で外務員に販売しているものもある。電話代も個人持ちである。

外務員の新人採用
外務員はすぐに辞めるので誇大広告で募集するが、なかなか入ってこない。多くの場合は、職員の紹介で入ってくる。しかし、紹介するとライバルが増えるだけなので会社は紹介することによる報奨制度とか、ねずみ講のような仕組みで紹介させようとしている。

入社時健康診断
一流企業ほど社員は健康な人ばかりだと思うが、外務員の入社時の健康診断はとても甘い。いくら不健康な人でもOKだが、高額医療のかかりそうな人と妊婦はダメである。

待ち合わせの強者
診査でも外務員との待ち合わせでは、強者もいる。営業所最寄りの駅改札で待ち合わせでは、時間まで営業所でくつろいでいて遅れる人がいる。ひどい場合は、忘れている場合もある。
バス停での待ち合わせは基本的にはナシだが、自宅マンション前のバス停でバスが見えてから家を出る人もいる。目印を何も持ってこないで、私が待っているすぐ横で「社医が来ない」と医務センターに電話をかける人もいる。

外務員からのプレゼント
賄賂の意味で贈ろうとする人もいる。もらったらあっという間に噂が広まるが、ひとまず持ち帰って社内便で
送り返す人もいる。テレホンカードや駅から離れた場所での帰りのタクシー代はもらう人はけっこういたようである。

葬式直後の勧誘
診査に行くと、仏壇前での診査が多い。
保険が下りて多少の感謝もしているので、死亡保険金を一時金にして貯蓄タイプの保険に加入する人が多いのである。



こんな時には嘘をつけ!
告知してはいけない病気、告知するとお客さんが損する病気とは何かを解説する。
血圧測定のごまかすにはどうしたらいいか?

転換契約にだまされるな!
以前加入していた古い保険を下取りに出して新しい保険に入る契約を転換契約という。転換契約は外務員はお客に勧めやすいため、よく勧めるがご用心。実は損なことが非常に多い。
先に古い契約を解約して他社に乗り換えようとすると、ひどい目にあうこともある。

高収入の人の入院特約は保険会社においしい
入院特約は、低収入で不健康な人でないとトクはしない。高収入の人は入院給付金をもらうより働いた方がいいので入院しても入院日数が短くなるので会社にとっておいしい。

一時払い養老保険の「抜け道」
一時払い養老保険が大人気となり、加入希望者が殺到したことがあった。加入させればさせるほど会社が損するものなのだが、売りやすく手当ても入るので外務員は喜んで契約を取ってきた。
会社が制限するようになっても似たような商品での抜け道があり、営業所長は外務員とともに契約を取ってきて会社に損害を与え続けた。

変額保険と訴訟騒ぎ
丸の内生命では、銀行から土地などを担保に借金させたお金で変額保険を売りまくり、大変な問題となった。
銀行からは当時高利の利子をとられ、入った変額保険の評価額はボロボロで大きなマイナス。すべての財産を失ってしまいかねない人が続出し、本社前にはハンストおじさんまで出現した。
裁判では、三億円の賠償命令も出た。

リビング・ニーズ特約の舞台裏
リビング・ニーズ特約とは、余命六か月以内と判断されたら死亡保険金を生前に支払う特約である。
請求があった時、どうするか社医にあらかじめ何の話もなくあまりよく考えずに始めたための混乱もあった。
専門の要員もなく、主治医への面談料なども考えずにはじめたため、請求してから一か月宙に浮いた例もあった。

解約したいときは本社へ行け!
保険の解約をしようとする時、営業所へ行こうとする人がいる。しかし、営業所は基本的に保険を取るところであって、解約などの便宜を図るところではない。
支社だってどちらかと言えば保険を取るところであり、内部の壁には解約防止率の棒グラフが描かれており、解約をしようと思っても説得されなかなか解約させてもらえない。
すんなり解約したいのなら、なるべく本社へ行くのがいい。

税金対策としての生命保険のすすめ
終身年金は、健康で長生きする自信のある人が加入するものなので、その中でもさらに長生きをしなければトクをしない。一方、死亡保険では平均寿命よりずっと早く死なないとトクをしない。
平均的な寿命の人は保険に入ってもなかなかトクをしないが、税金対策としては有効である。



特別条件をくつがえせ!
特別条件がついて保険料が割増になると、契約は非常に流れやすい。そこで営業所はなんとか特別条件をひっくり返そうとする。血圧が200近くで不整脈もあり、尿から糖も蛋白も出ている人が、いつの間にか正常決定で通ったりする。

やっぱり「コネ」と「カネ」の裏ルート契約
不健康な人が特別条件をひっくり返す場合、契約の保険金額がものを言う。重要人物なら、いくら健康状態が悪くとも普通決定で保険に入れる。
健康状態が悪い社長の場合、従業員の契約を目論んで・また取引先の紹介を期待して特別条件はひっくり返る。
契約部から
「個別状況によっては、特別条件をなんとかできるので(VIP顧客の)情報を提供するように」という文書が出たこともあった。
診査自体は高額契約の方が厳しいが、査定は甘くなっているのでそれなりに釣り合いは取れているのかも。

契約成立への裏技
不健康な人が契約を通す大技もある。往診に来た社医の態度が悪いと難癖をつけ、本社に怒鳴り込むのである。健康状態の問題から社医の態度の問題へと話のすり替えに成功すると、診察や尿検査など何もしなくとも契約が成立することがある。
ただし、これは大技だけあって失敗すると間抜けなことになる。

診査承認と契約成立は違う
入院給付金をもらったり、診査で異常所見が見つかると会社のデータベースに載る。こうなると、診査をうけるにはあらかじめ契約部に許可が必要となる。
しかし、診査承認が下りたからといって、特別条件がなくなるわけではない。承認が下りると、もう契約が成立したかのように勘違いしている外務員もいるが、「社医に限る」といったものはとくに普通条件にはなりにくい。

運悪く二年以内に死亡したときは
契約後二年以内に死亡することを早期死亡という。二年以内の死亡では告知義務違反を問われて契約解除になることがあるが、診査で見逃しがあったり、:契約部が死にそうな病気を承知で通した場合や、外務員のそそのかされて嘘を言ったことが証明できた場合には支払われることもある。

病気を隠していても保険金がもらえる場合
損害保険と違い、生命保険では半損とか何割過失とかの中間がなく、まったく出ないか全額出るかの二択となる。二年以内に死亡した場合は調査が入るのだが、生命保険では告知義務違反が非常に多い。
二年以内に死亡した場合での支払い査定では、告知義務違反の有無と重要度・死亡との因果関係・病気の自覚・会社過失などを総合的に判断することになるので、そこについて詳しく説明をする。結局、、ついても困らない嘘はある。

自殺では保険金はもらえないか
かつては加入後二年以内の自殺には保険金が支払われなかったが、加入後一年以上経過していれば支払われるようになった。これは、自殺しようと思い立ってから一年以上も生きていないと会社が思っているからではない。免責の一年を過ぎても、告知内容によっては契約解除になる場合もある。
現在では自殺の免責期間を2~3年としている保険会社が多く、会社によって異なるので注意が必要である。

加入を断られたとき・・・他の保険会社なら入れる?
損害保険と違って、保険会社は1社のブラックリストに載っても他社に入れないわけではない。情報交換がされているものとされていないものを解説する。




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